スウェーデン映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』（09）は世界的な成功を収め、監督のニールス・アルデン・オプレヴの元にはハリウッドのスタジオから、あまたのオファーが舞い込んできた。この2年半で彼の元に送られてきた脚本は、実に250本にも及んだが、興味を引く作品はなかなか見つからない。そんな中で『デッドマン・ダウン』はひときわ際立っていた。「この脚本は素晴らしかった。250本の脚本の中で興味を持てたのはひと握りだったが、手を加える必要がある。でも、この脚本はほとんど完璧に近かったんだ」とオプレヴは振り返る。「キャラクターに素晴らしい感情と深みがある。それに心の救済、運命の救済という僕が大好きなテーマを持つ脚本だった。ヴィクターとベアトリスが出会って起こるクレイジーな出来事が、自分たちを救済するセカンドチャンスへと二人を導いていくんだ。それがおそらく僕にとって最も美しいテーマだったと思う」

主演のコリン・ファレルは、『トータル・リコール』で製作のニール・モリッツと組んだばかり。一方のヒロイン、ノオミ・ラパスも『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で監督とタッグを組んでいる。今回の出演は両者ともスンナリ決まったが、彼らが本作に魅了された理由も、監督と同様に脚本だった。「キャラクターはもちろん、彼らの因習や、ヴィクターとベアトリスの地理的な配置も面白かった。二人が必然的に近づくような距離感と二人の関係が始まる時の、ある種の覗き見主義的な要素でさえも興味をそそられた。そこには僕の好きなヒッチコック的な要素があったんだ」とファレルは振り返る。一方、ラパスは「物語全体が残酷な武勇伝のようね」と本作を説明する。「ベアトリスは少女っぽさや幼さを乗り越えて、タフで女らしい女性に変わろうとしている。自分の周りで起こっていることに敏感になっている、ある意味傷ついた小さな妖精のような感じなの」

『デッドマン・ダウン』はハリウッド資本で製作されているが、スタッフ・キャストの顔ぶれは実に国際的だ。オプレヴ監督はデンマーク人で、主演のコリン・ファレルはアイルランド出身、ヒロイン、ノオミ・ラパスはスウェーデン生まれ。共演のドミニク・クーパーはイギリス人で、イザベル・ユペールはフランス人。主要キャストの中でアメリカ人はテレンス・ハワードくらいだ。「ある日の夕食で、私たちは冗談を言い合ったわ。“この顔ぶれでハリウッド映画を作るのよ！”ってね」とはユペールの弁。そして彼女は「本当に素晴らしいアンサンブルだった」と、共演者とこの作品との出会いを振り返る。「この映画でヴァレンタインを演じてよかったと思うことのひとつに、英語とフランス語が行ったり来たりする環境があったわ。それは私とノオミの関係にとって、とてもいいことだったわ」